素直になれない夏の終わり
聞いただけで、夏歩は既にげんなりしてしまう。
「なに、想像しただけで嫌になったの?」
どうやらげんなりしたのが顔に出たらしく、美織が苦笑する。
「でも夏歩、卒業旅行でテーマパークに言った時、ジェットコースターとかとんでもない行列だったけど、楽しそうに並んでたじゃない」
「あれは、仲良しの人とお喋りしながらだったから我慢できたの。そうじゃなかったら並ばないよ」
みんなで楽しむためなら我慢もできる。並んでいる間も楽しかったのは事実だ。まあ、多少げんなりはしたけれど。
でも話し相手もいない一人の状態での行列なんて、苦行以外のなにものでもない。
「まあ、テーマパーク程の行列ではないけどね、流石に。オープン初日なんかはどうだったか知らないけど。それに夏歩には、そういう時に喜んで話し相手として一緒に並んでくれる奴がいるじゃない」
その“奴”とは奴のことかと、夏歩は行列を想像した時とはまた別の意味でげんなりする。
夏歩、顔。と美織から指摘されたので、またしてもげんなりが顔に出ていたらしい。