素直になれない夏の終わり
「次のお休みだけど、まだ空いてる?」
「……埋まってる」
「はい、嘘つかない。そのまま空けておいて」
変に間が空いたのがよくなかったのか、すぐさま嘘だと見抜かれた。
それが悔しくて膨れている間に、温まった味噌汁をよそった津田が戻ってくる。
「次の休み、何かあるの」
津田が腰を下ろすなり問いかけると、「ん?」と首を傾げた津田は次の瞬間ヘラっと笑った。
「“当日までのお楽しみ”って、素敵な言葉だよね。俺、結構好き」
「……私はこの瞬間嫌いになった。いいから何があるのか言って」
「それじゃあ当日楽しくないでしょ」
どうあっても、津田はそれ以上教えるつもりがないらしい。
効果がないとわかってはいても、とりあえず既に楽しそうな津田に不満をぶつけるように睨みつけて、夏歩は食事を再開した。
お椀を手に取り、立ち上る湯気に息を吹きかけてから口を付ける。
やはり味噌汁は、温かい方が美味しい。