素直になれない夏の終わり
「ああ、やっと起きた。おはよう、なっちゃん。じゃあ早速だけど、顔洗って着替えて支度して」
「……は?」
煩いとか鬱陶しいとか黙れとか、そんなようなことを言ってやろうと思って顔を出したのに、そのどれでもない大変短い言葉が夏歩の口から零れおちた。
「あっ、その前に、いいもの見たい?」
楽しそうに笑った津田は、まだ夏歩が何も答えぬうちから、振り返ってテーブルの上に置いていたものを手に取った。
じゃーん!と効果音つきで披露されたものを見るために、夏歩は反射的に上半身を起こす。
綺麗に弁当箱を半分に割った、黄色と茶色の二食が目に飛び込んできた。
「そぼろ弁当です」
「……はい?」
確かに津田が持っているのは弁当箱だ。それも、夏歩がいつも使っている二段のものではない、一段だけの弁当箱。
「……私、今日休みだけど」