素直になれない夏の終わり
「ちょっと!」
「バスケやってるみたい?」
「違う!!何で同じ方に動くのよ」
「通せんぼしてるからじゃないかな」
「あのね、こんなところで津田くんと遊んでる暇なんてないの!」
右、と見せかけて左に動いたりしてみても、津田はそんなフェイントには引っかかってくれない。
「忙しいの?何か用事?」
くっ、このっ……!と夏歩が躍起になっているのとは対照的に、津田は涼しい顔で質問までする余裕がある。
「用事が、あるって言ったら、どいて、くれるの……!」
「その言いぶりだと用事はないみたいだね。じゃあちょっと話を戻すけど――」
「勝手に、決めるな!!」
まるで反復横跳びのような運動にちょっぴり疲れてきた夏歩は、左右に動くのをやめて津田を睨みつける。
もちろん津田はいつもの通り構うことなく、睨む夏歩に笑顔を向けて遮られた話を続ける。
「今日の夕飯は、使いかけのシチューの素を片付けるためにシチューにするか、それとも半端なキャベツを片付けるためにロールキャベツにするかで迷っててね。なっちゃんは、どっちが食べたいかなーと」
「だから、それはここでしなくちゃいけない話なのかってさっきも言った!」