素直になれない夏の終わり
休みの日にも三食ないし、二食は必ず作りに来てくれて、掃除や洗濯などの家事もこなし、お風呂だって洗って沸かしておいてくれる。
始めの頃はそれが鬱陶しかった。鍵を取り戻して、なんとかやめさせようと思っていた。
それなのにいつの間にか、津田が毎日のように訪ねてきて家事をしてくれることが、当たり前になっていた。
休日に家から無理矢理連れ出されるのも、行くまでは面倒くさいけれど、行ってしまえば楽しくさえあった。
(……ここに来て、津田くんに押されている気がする)
津田の背中を見つめていた目が、キュッと細められる。
眉間に少し皺が寄って、まるで怒っているような表情になった。
そのタイミングで振り返った津田が、何気なくベッドの方に視線を向け、不機嫌面の夏歩と目があって「うわあ!?」と声を上げる。
滅多に聞くことのできない、素で驚いた声だった。
「……ビックリした。なっちゃん、いつから起きてたの?ああ、もしかして、起こしちゃった?」
まあ起こしちゃったかと聞かれたらそうなのだが、あれだけ音に気をつけていた津田にそれを言うのは流石に気が咎めたので、「……今さっき」と答えておく。