素直になれない夏の終わり

そっか、と返して笑った津田は


「せっかくだから、起きたなら支度したら?そしたら今日は、ゆっくりご飯が食べられるよ。まあ、まだ出来てないんだけどね」


そう言って再びキッチンに向き直る。

ベッドに横になったまま、どうしようかと夏歩が迷っていると、キッチンの方からいい香りが漂ってきた。

何かを切っているリズミカルな包丁の音、鍋がグツグツ煮立つ音、そこに電子レンジの温め終了を告げる音も加わって、しばらくすると何かを炒め始めるような、油が弾けるジューっという音が聞こえてくる。

津田の言葉を無視して今度こそ二度寝をしても良かった。何しろ時間はたっぷりとある。

けれど夏歩は体を起こして、ベッドから降りてクローゼットに向かい、着替えを取り出して洗面所に向かった。

こんなにいい匂いがしている中、最早二度寝なんて出来るわけもない。
脳はまだ眠いと訴えるけれど、お腹の方は完全に目覚める体勢に入ってしまっている。

夏歩が支度を終えて部屋に戻ってくると、津田の方も支度が出来たようで、丁度テーブルの上に朝食が並ぶところだった。
< 256 / 365 >

この作品をシェア

pagetop