素直になれない夏の終わり
本日の朝食のメニューは、角切り野菜とベーコンのコンソメスープにバタートースト、スクランブルエッグとボイルしたウインナー。
津田が「ケチャップ忘れた」と立ち上がったのを横目に、夏歩はいただきますをして、まずはスープの入った器を引き寄せる。
スープはそれだけでお腹がいっぱいになってしまいそうなほど具だくさんで、コンソメの優しいお味に黒胡椒がピリッと効いている。
ケチャップを手に津田が戻ってきた時には、夏歩はトーストに手を伸ばしていて、熱で溶けたバターが食パンにじゅわりと染み込んでいるのが堪らなかった。
続いてお皿の上のスクランブルエッグに、津田が持って来たケチャップをかけて食べる。同じ皿に盛りつけられたウインナーも同様に。
何も言わずとも、黙々と食べ進める夏歩に津田も心なしか満足そうな顔をしている。
「今日は時間がたっぷりあるから、食後のココアもゆっくり飲めるね」
「嫌味?」
いつもは夏歩が中々起きないから朝はバタバタと忙しないと遠まわしに言われているのかと思ったが、津田は「そう取るか」と苦笑した。
「もっと素直に、言葉そのままに受け取ろうよ」
「素直に受け取った結果なんですけど」
「いや、なっちゃんは絶対、俺の言葉を一回変なフィルターを通してから受け取ってる」
「……変なフィルターってなに」