素直になれない夏の終わり
「そんなこと言わずに、頑張ってみたらいいんじゃない?案外やれば出来るかもよ。なっちゃんってそういうとこあるでしょ」
「……私の何を知ってるのよ」
得意げな顔が鼻について、夏歩は皿に残っていた最後のウインナーをやや乱暴にフォークで刺して口に運ぶ。
夏歩が少し不機嫌になっても、津田は全く動じる様子もなく、むしろヘラっと笑って
「なんでも知ってるとは言わないよ。でも、知ってる。なっちゃんのこと、ずっと見てたんだから」
ずっと近くにもいたしね、と付け足された言葉に、夏歩は「ストーカー」と返してやる。
「やめて、なっちゃん。それだと犯罪臭がしちゃうから。俺はただの善良な一般市民」
「善良な一般市民は鍵奪って他人の家に何度も侵入したりしない」
「やめて、ますます犯罪臭がしちゃうから。奪ったんじゃなくて、貰ったんだよ。それも本人から」
「あげてないって言ってるでしょ」
空になった皿を積み重ねて、夏歩はそれを持って立ち上がる。
津田はまだ何か言いたそうだったけれど、結局何も言わずに自分も重ねた皿を持って夏歩に続いた。