素直になれない夏の終わり
「卵はいる?」
「んー……いる」
また津田は冷蔵庫を開けて今度は卵を一つ取り出すと、器に一旦割り入れてかき混ぜ、ふつふつしてきた土鍋に回し入れる。
はい、お待たせ。と鍋つかみをはめた手で土鍋を運んできた津田は、鍋敷きの上に置くなり鍋つかみを外し、夏歩のお椀を手に取った。
「熱いから、気を付けてね」
お腹はいっぱいのはずなのに、お椀を受け取るとすぐに箸が伸びた。
先ほどよりずっと控えめな、ふーふーして美味しくいただける温度のうどんは、柔らかすぎず固すぎず。
野菜、肉、魚介、具材の旨味が存分に染み出した出汁がまた最高で、夏歩はお椀に盛られた分は全て、汁まできっちり飲み干した。
二人で綺麗に片付けた鍋を前に、津田の表情は大変満足そう。
その表情のまま土鍋をシンクに運ぶと、洗い始める前にヤカンでお湯を沸かした。
そんな津田の背中を、夏歩はジッと見つめる。
お昼休みに美織に言われたことを思い出しながら、じいいっと。