素直になれない夏の終わり
10 本日は……
その日夏歩は、スマートフォンのアラームで目が覚めた。そして、肌寒さにふるりと震える。
まずは布団を引っ張ってしっかりと体を包んだら、次に枕もとに手を伸ばしてスマートフォンを掴む。
鳴り響くアラームを止めてまた目を閉じた夏歩は、ややあって、微かな違和感にまた目を開けた。
枕に頭をつけた横向きのままで、部屋を見渡す。
あれ……?と上体を起こすと、もう一度部屋の中を見渡し、その視線をキッチンで止めた。
「……いない」
ポツリと呟いた声が、自分の他には誰もいない部屋に寂しく響く。
いつもならとっくにいる時間帯なのに、アラームを止めてから二度寝をしようとする夏歩に苦笑しながら声をかけるはずなのに、今日はその姿が、津田の姿がどこにもない。
キッチンに向けていた視線をスッと動かして部屋のドアに向ける。
トイレか、もしくは夜の為にお風呂の掃除でもしているのだろうかと思ったけれど、ドアの向こうどころか家の中は、シーンと静まり返っている。
夏歩が時折身じろぐと衣擦れの音がするくらいで、あとは何の音もしない。夏歩以外に人がいる気配もない。