素直になれない夏の終わり

冷蔵庫の中には他にも幾つかタッパーが入っていて、開けてみると中身は作り置きのおかず。

一つ一つタッパーを開けていくうちに、以前ピクニックに行った時のお弁当で使われたと思しきひき肉のそぼろに行き当たった。

それを手にしたまま冷蔵庫を閉めると、夏歩は炊飯器を開ける。
昨日の帰り際に津田が、明日のお弁当用にとお米を研いでいたのを夏歩は知っている。

蓋が開いた瞬間湯気が立ち上って、その下には炊けた白いご飯。
それを茶碗に盛ってそぼろをふりかけ、沸かしていたお湯でインスタントの味噌汁を作る。

津田が訪ねてくるまでは、夏歩に朝ご飯を食べるという習慣はなかったのだが、今では逆に食べることが習慣になって、津田がいない日でもこうして冷蔵庫から出したものとインスタントで軽い朝食を用意するようになった。

テーブルに運んでベッドとの間の定位置に腰を下ろすと、夏歩はこれもまた津田が来てから習慣になったものの一つ、「いただきます」を口にしてから箸を手に取る。

まずは味噌汁から。“根菜たっぷりのお味噌汁”とパッケージに書かれたものを選んだのだが、色味から判断できる人参と、それだけ形が違うゴボウ以外は、何が何だか識別が難しい。

じゃが芋、いや里芋……?……ん?これはなんだ……といった具合に。
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