素直になれない夏の終わり

ならばこの、いつもとは違うように感じるのは何なのか。

大きな違いと言えば、津田が作ったか夏歩が作ったかという部分になるけれど、それだって入れる粉やお湯の分量は同じで、違いがあっても些細なもののはず。

津田が、何か特別なものを入れて作っていたとも思えない。
もう一度「んー……」と唸って、夏歩は悩ましげな顔でココアを飲む。

一口、二口と飲んで、マグカップをテーブルに置くと、ベッドに背中を預けて天井を見上げる。

津田からの連絡は、未だにない。スマートフォンは沈黙を保っている。
心がそわそわして、かと思ったらモヤモヤして、何だかとても落ち着かない。

この気持ちが全部口から出て行ってくれたら、きっとすっきりするのに……なんて思いながら、夏歩は天井に向かって息を吐く。

ついでに、朝からこんな気持ちにさせた津田に対して、「津田くんの、バーカ」と恨み言も吐き出しておいた。もちろん、それで気持ちがすっきりしたりはしない。

ベッドに預けていた背を離した夏歩は、視線をチラリとスマートフォンに向け、手を伸ばしそうになる衝動をグッと堪えて、代わりにマグカップに手を伸ばす。

やっぱり今日のココアは、いつもより味気ない。




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