素直になれない夏の終わり
「まあ、なっちゃんがいいならいいけどね。それより、何食べる?冷蔵庫にあんまり食材が入ってないから、大したものは作れないけど」
「……大したものが作れないような食材しかなくて悪かったですね」
夏歩は普段、料理をしない。しないと言うか、はっきり言ってしまうと苦手なのであまりしたくないのだ。
その為、食事はほとんどがスーパーのお惣菜かコンビニのお弁当で、かろうじてあるものと言ったら、調理しなくても食べられる類の物と、レトルトやインスタント食品。
一応調理器具は一通りあるけれど、もっぱら活躍しているのはヤカンと電子レンジくらい。
その電子レンジにはオーブン機能も付いているのだが、残念ながら夏歩は活用できていない。
「なっちゃんが料理苦手なのはよおーく知ってるから、そんなに落ち込まなくてもいいよ。なっちゃんが出来なくても、俺が出来るからね。で、何食べたい?」
確かに津田は、夏歩が料理を苦手としていることをよおーく知っているだろう。
高校の調理実習の時間にだいぶ醜態を晒して、その度に津田に助けてもらっていたのだから。