素直になれない夏の終わり
それから夏歩は寝たり起きたりを繰り返し、起きるたびにカラカラの体にスポーツドリンクを流し込んだりお粥をジッと見つめたり、体調を窺う美織のメッセージに返信したり、時々熱を測ったりして時間を過ごした。
そうして何度目かの起床で、夏歩はそれまで体を苛んでいた寒気が、燃えるような熱さに変わったのを感じた。
それまでは寒くて寒くて仕方がなくて、布団にすっぽりとくるまっていたのに、今はそれが熱くて仕方がない。
目を開けるのが億劫で、夏歩は起きているけれど目は閉じたまま、「んん……」と苦しげに唸って布団を跳ねのける。
けれど、そうやって体の上からのけたはずの布団が、すぐまた元の通りに夏歩の体を包んだ。
どうしてとか、なんでとか、考えるのも億劫で、夏歩は再び足と腕を使って自分の上から布団を跳ねのける。
けれどすっきりするのは一瞬で、温かい、夏歩にとっては熱くてしょうがない布団が、またすっぽりと体を包み込む。
「……やだ、あっつい……」
掠れた声で訴えたら、前髪がそっと持ち上げられて貼られていたものが剥がされ、新しくひんやりしたものが貼られた。
その冷たさが心地よくて、それまで苦しげだった夏歩の表情がほんの少し穏やかになる。