素直になれない夏の終わり
ピンポーンとチャイムの音が連続で二回、その二回目で夏歩の意識が浮上する。
薄っすらと目を開けたところで、チャイムがもう一回。
そう言えば美織が、次に来る時はチャイムを鳴らすから頑張って鍵を開けに来るように言っていたことを思い出す。
まだ体は燃えるように熱いしだるさも頭痛もあるけれど、何とか気力を振り絞ってベッドに手をついて上体を起こす。
次に布団から足を出そうとしたら「いいよ」と、それ以上の動きを制するように手の平が突き出された。
遠ざかっていく背中をぼんやりと見つめ、四度目のチャイムを聞きながら、夏歩は起こした体をゆっくりと横たえる。
「……なんで、いるんだ?」
呟いたら喉が痛んで、夏歩はテーブルに手を伸ばしてペットボトルを掴む。
ほんの少し体を起こしてストローを咥えると、廊下で話し声が聞こえ、ほどなくして部屋のドアが開いた。
「夏歩、具合どう?ゼリー買って来たけど食べられる?」