素直になれない夏の終わり
夏歩の体調を気付かないながら先に入って来たのは美織で
「あっ、俺も買ってきてあるよ、ココアプリン」
その後に続くのが津田。
そう、昨日から連絡もなしに姿を見せなかった男が、なんでか何事もなかったかのように部屋にいるのだ。
「ちょっと津田、あんたなんで夏歩に何も食べさせてないのよ」
テーブルの上を見た美織は、昼間自分が置いて行った時のままになっているお粥の袋を指差しながら津田を振り返る。
美織は余程険しい表情をしていたのか、振り返った瞬間津田がビクッと肩を跳ねさせた。
「いや、違っ!寝てるの起こしてまで食べさせるのはかわいそうだし、でも起きても水飲んでまたすぐ寝ちゃうから……」
「全く、あんたがそんなことだと夏歩がいつまで経っても治らないでしょ!ほら、さっさとお粥温める」
美織に叱られた津田は、テーブルの上からお粥の袋を取って、とぼとぼとキッチンに向かう。
その背中を夏歩がぼんやり見つめていると、「夏歩、具合は?」と先ほどよりずっと近くで美織の声がした。
見れば、ベッドのすぐそばに美織がいる。