素直になれない夏の終わり
2 夕飯はオムライスの二人
「見るからに飲んだ感じだったからね、そりゃあトイレと大親友にもなれるわよ」
お昼休み、会社の休憩室のテーブルを挟んで向かい合い、夏歩が休みの間に起ったことを話すと、パックの野菜ジュースにストローを差し込みながら呆れたように美織が言った。
「とりあえず、何もなかったみたいで良かった。まあ何もないとは思ってたけど。これで、津田がどれだけ夏歩を大事に思ってるかがわかったわね」
どういうことかと聞いた夏歩に、美織は一旦野菜ジュースを吸い込んでから口を開く。
「だって夏歩、記憶がなくなるほど酔っ払って、もうとんでもなく無防備で、言ってみれば手を出し放題な状態だったのよ。津田にしたら絶好のチャンスじゃない」
恐々と「何の……?」と聞いた夏歩に、美織はあっさりと「既成事実を作る」と答えた。
「そうなれば、晴れて、ようやく、津田は夏歩と付き合えると。それどころか、付き合う過程すっ飛ばして、結婚までいってたかもね」
恐ろしいことを何ともあっさりと言ってくれる美織は、固まる夏歩を眺めながらストローを咥える。
「……いや、それは……なんて言うか、ほら……えっと……流石に、ないんじゃないかな。津田くんだってそこまでは……たぶん……」
「津田だってあれでも男だけど?」
「それは……そう、だけど……」
ごにょごにょと歯切れの悪い夏歩をしばらく眺めて、美織は「ふーん」と意味ありげな相槌を打つ。