素直になれない夏の終わり
思わず声に出てしまった心の声に、津田が言いかけた言葉を一旦引っ込めて、不思議そうに首を傾げる。
意図せず津田の話を遮る形になってしまって、せっかくの真剣な雰囲気も壊してしまって、なんだか申し訳ない気持ちで、夏歩は「何でもないから……」と呟きながらそっと視線を逸らす。
いやでもこれで真剣な雰囲気が壊れたおかげで、この胸がドキッとする妙な感じがなくなるのではないかと思ったが、「そっか、じゃあ」と津田はわざとらしい咳ばらいを一つして、更にそこから間を空けることによって、真剣な雰囲気を取り戻しにかかる。
なっちゃん、と呼ばれて反射的に視線を向けてしまい、しまった……と思った。思ったけれど、もう遅い。
完全に戻ってしまった真剣な雰囲気、真剣な表情、静かな部屋に二人きりという状況、色んなものが再び夏歩の胸をドキリとさせる。
これまでだって部屋の中に二人きりのことなんて幾らでもあったのに、なぜ今回に限ってこんなに胸が……と考えて、いつもと今日との違いに思い当たる。
「……そうだ、熱があるんだ」
「え?」