素直になれない夏の終わり
再び心の声が声として出ていたようで、津田がまた首を傾げる。それから、夏歩が何か言うより先に困り顔で笑った。
「ねえ、なっちゃん。話が全然進まないんだけど」
確かに津田の言う通り、これでは話が進まない。
ごめん……と、自分でもビックリするくらい素直に謝罪が零れ落ちる。夏歩もビックリしたけれど、津田もまた驚いたような顔をしていた。そこから、津田はヘラっと笑って
「なっちゃんのことが、好きだからだよ。だから俺は、今ここにいる。たぶん、美織に帰れって言われても帰らなかったかも」
「……そこは、帰りなさいよ」
不意打ちで、また夏歩の胸はドキッとして、でもそれを津田に気付かれたくはなかったから、何とか言葉を返して誤魔化す。
そこで終わらせても良かったのだけれど、気付いたら夏歩は更に言葉を続けていた。
「……昨日は、何で来なかったの。……連絡も、なかった」
津田の顔を真正面からは見られなくて、夏歩は僅かに視線を逸らして横目に表情を窺う。
しばらく津田は固まっていて、それから、とっても嬉しそうに笑って答えた。