素直になれない夏の終わり

「たとえそうだったとしても、津田くんに限ってそれはないでしょ。だって津田くんだし」

「津田だって、あれでも一応男だけど?」

「そうだけど、でも津田くんは津田くんだし」


歯切れよく答える夏歩に、美織は「ふーん」と妙に意味ありげな相槌を打つ。


「……なに?」


夏歩が訝しげに問えば、美織は「いや、別に」と答えた。


「信頼関係って大事だからね」

「……何が言いたいの?」


またしても「いや、別に」と答えて、美織はサラダを口に運ぶ。噛むたびに、名前通りのシャキシャキといういい音がした。


「それだけ信頼してて、その相手にも間違いなく大事にされてたら、あとはもう夏歩が素直になるだけよね。誰かに取られちゃう前に」


何しろ奴は、優良物件だから。と言って、美織は笑う。その笑顔が、夏歩には妙に意地悪く見えた。


「津田って、最近テレビでよく見る若手俳優に似てると思わない?」

「まだテレビ置いてないから知らない」

「じゃあ今度その人が載ってる雑誌を貸してあげる。津田に顔立ちがよく似た、爽やか系のイケメンよ?」

「いい、いらない」
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