素直になれない夏の終わり
「そうね、言ったわね。でも、いくら一途な津田でも、いつまでも夏歩ばっかり追いかけてくれるわけじゃないのよ?夏歩があまりにも素直じゃないと、別の脈がありそうな子に気持ちが移っても、それは仕方がないことよね」
そう言って美織は、ニヤニヤ笑いながらサラダを口に入れて、シャキシャキと噛みしめる。
これは相手にしたら負けのやつだとわかったから、夏歩は黙って顔ごと逸らした。
「ところで夏歩、お昼はどうしたの?早く食べないと時間がなくなるわよ」
チラッと視線を向ければ、美織の顔はまだニヤついている。
「持ってきてないわけないわよね。それとも、また津田が来てくれなくなった?」
「…………」
「実は途中でずっこけてぐちゃぐちゃに」
「してないよ!」
別に隠していたわけではないけれど、こんなことなら持ってきてすぐテーブルに置けばよかったと後悔しながら、夏歩は膝に載せていたランチバッグをテーブルに出す。
「やっぱり持ってるんじゃない。やっぱり夏歩には、津田のお弁当が一番似合うわよね」
「……お弁当に似合うも似合わないもないでしょ」
買ってからだいぶ時間は立っていたのに、新品同様だったランチバッグと揃いの弁当箱。それが今では、使われなかった時間を取り戻すように毎日大活躍だ。