素直になれない夏の終わり
「ねえ、なっちゃん。俺と付き合って」
「……はあ?」
お椀から口を放すと同時に言い放つと、津田から返ってきた言葉は
「それって、“はい”ってこと?」
「んなわけあるか」
すぐさま言い返し、夏歩はお椀を置いて今度は茶碗を手に取る。
「タイミングがおかしいでしょ、どう考えても」
「変に気負わずに自然な流れで言った方が、なっちゃんも自然に“はい”って言っちゃうかなーと思って」
「どこが自然よ。思いっきり不自然」
そうかなーと呟いて、骨から綺麗に身をほぐしていく津田は、箸の動きを止めることなく
「それで、お返事は?イエスでいいですか?」
「……いいわけあるか。て言うか、もしかして魚に告白してるの?」
いや、出来るだけ自然な感じを演出しようかと。とようやく顔を上げた津田に、夏歩は呆れたように息を吐く。
「演出しようとしてる時点で、それはもう自然じゃないでしょ」
なるほど、確かに……と津田は頷いて、ほぐした身を口に運んだ。