素直になれない夏の終わり
1 同窓会での二人

かんぱーい!の音頭に合わせてガラスのぶつかり合う音が響いた時、夏歩はレモンサワーの入ったグラスを持っていた。

そこは“大人数での宴会も大歓迎!”を謳う居酒屋で、普段は襖で仕切られている座敷から襖を取り払って作られた広い宴会場では、本日何年振りかの高校の同窓会が開かれていた。

夏歩が通った高校は全部で二クラス、その内今日集まったのは、一クラス分より少し多いくらいの人数。


「えっ、チーフマネージャー?凄いねそれは。おめでとう!」

「ありがとう。わたし、バリキャリ目指そうかと思ってさ」

「あれ、前の同窓会の時は、さっさと結婚して寿退社するのが夢だって言ってなかった?」

「男と遊んでるより、仕事してる方が楽しいって気付いたの。だからその夢は諦めた」

「あっ、それわかる!あたしも今は仕事が楽しい。今度ね、店舗一つ任せてもらえることになったんだー。ついにあたしも店長!」


そんな話で盛り上がっている席もあれば


「いいのかよ、奥さん妊娠中だろ」

「今日ぐらいいいだろ。それに、里帰り出産するって、今は実家に帰ってて家にいないんだよ。おれも明日新幹線で向かうんだけどな」

「へえー。そういやあ、何人目だっけ?」

「今お腹にいる子が五人目だな。女の子らしい」

「やるなあ。あれ、お前のとこも確か、生まれたばっかりだよな」

「うちは、双子で両方男だな。これがまた可愛くて、あっ!写真見るか?てか見ろ!マジで可愛いから」


そんな話で盛り上がっている席もあって、同窓会にしてはやや少なく感じる人数でも、座敷内は大変賑わっていた。その中に――
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