素直になれない夏の終わり
3 本日は食後にデザート付きの二人
どこか遠くから聞こえてくる音に、薄ぼんやりしていた夏歩の意識が徐々に浮上する。
しばらくそのまま音の正体を探っていると、やがてそれは昨夜自分でセットしたスマートフォンのアラームであることに気がついた。
もうそんな時間かと布団から顔を出し、夏歩は枕元にあるはずのスマートフォンに手を伸ばす。
すぐに起きるつもりでスヌーズにすることなくアラームを切るが、意思とは反対に頭はぽてっと枕に落ちた。
「なっちゃん、ほら起きて。朝ご飯出来るよ」
なんだか聞き覚えのあるようなないような声がして、夏歩はぼんやりする頭をなんとか枕から持ち上げて声のした方を窺う。
キッチンに立つ津田の背中が見えた瞬間、夏歩は一気に覚醒した。
「なっ!?津田くん、勝手にひとのキッチンで何してるのよ!」
「何って、朝ご飯作ってるんだよ。あと、なっちゃんのお弁当も。起きたなら顔洗っておいで、もう出来るから」
振り返った津田は、夏歩を見て苦笑する。
覚醒したとは言っても寝起きの頭、聞くまでもないことを聞いてしまった。