素直になれない夏の終わり
そのまま洗面所に向かおうとして途中で忘れ物を思い出し、クローゼットの前まで戻って着替えを取り出す。
「思うんだけどさ、着替えならここでしたらいいじゃん。ほら、俺背中向けてるから見えないよ?」
「嫌だ」
「高校の時だって同じ教室で着替えてたじゃん。俺は全然気にしないよ」
「津田くんが気にしなくても私が気にするの!それに高校の時の着替えって、それ体育のことでしょ。あれは下着になるわけじゃないからいいの」
「男子は下着になってたけどね」
それとこれとは話が違うだろ!と言い返すのがもう面倒くさくて、夏歩は無視して着替えを手に洗面所に向かう。
脱衣所の方が広いので着替えをするなら本当はそちらの方がしやすいのだが、顔を洗ったり歯を磨いたりもしなければいけないことを思うと、多少狭くとも洗面所で着替えまでしてしまった方が面倒がない。
着替えと一緒に持ってきたポーチの中から道具を取り出して化粧も済ませてから、夏歩は部屋に戻る。
テーブルの上には既に、朝食の用意が整っていた。