素直になれない夏の終わり
「なっちゃん、なっちゃん!これすっごく美味しいよ。タコのから揚げだって」
宴会が始まってからずっと、夏歩と同じテーブルから離れない津田と
「へー、そう。じゃあ津田くんが好きなだけどうぞ。私はちょっと向こうのテーブルに顔出しに……って、勝手にひとの皿に取り分けるな!」
何かと津田に邪魔されて、中々テーブルから離れられない夏歩がいた。
「そんなにテーブル巡りしたいならさ、後で一緒に行こうよ」
「なんで津田くん引き連れて行かなきゃいけないのよ!」
「俺のなっちゃんが、酔っ払った輩に絡まれたらいけないから」
「輩って……元クラスメートでしょうが!あと、どさくさに紛れて“俺の”とか言うな」
睨みつけながら怒鳴る夏歩と、それを笑顔でかわす津田、そんな二人と同じテーブルには、言い合う姿を向かい側から呆れたように眺めながら、中々ハイペースにハイボールを飲む姿があった。
「ねえ、美織!美織からも何とか言ってよ」
高校時代からの夏歩の友人で、現在は部署は違うが同じ職場で働いている園田 美織は、呼ばれた瞬間サッと視線を逸らした。
「何かって言われてもね……。面倒くさいから、もう諦めて連れて行ったらいいんじゃない?」
「そんなあ!!」
夏歩が悲痛な声をあげれば、反対に津田は嬉しそうに笑う。