素直になれない夏の終わり

テーブルの上には他にスープカップもあって、そこからはコーンポタージュの香りがしている。
優しい黄色をスプーンでかき混ぜれば、底の方からトウモロコシの粒が顔を出した。

キッチンの方からは微かにカタカタと音が聞こえていて、見ればコンロにヤカンがかかっている。


「ねえ、なっちゃん。今日の夕飯は何が食べたい?何かリクエストある?」

「……夕飯も作りに来る気なんだ。今日も」


夏歩の呟きを、津田は笑顔でサラリと流す。


「夕飯はいらないから、今ここで鍵を返してくれてもいいけど」


手の平を上にして津田の方に腕を突き出すも、それもまたサラリと無視される。


「何か思いついたら、出来ればお昼までに連絡よろしく。材料がなかったら、仕事終わりに買い物しないといけないから」


そう言って津田は立ち上がり、キッチンに向かってコンロの火を消す。

夏歩はその背中にチラッと視線を送ってから、突き出していた腕を戻し、止めていた手を動かして残りの朝食を食べる。

しばらくすると、津田が湯気の立つマグカップを手にして戻って来た。
何も言わず、当たり前のように夏歩の前に置かれたマグカップの中身は、もちろんココア。




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