素直になれない夏の終わり

確かに時折、半袖一枚ではなんだか肌寒いなと感じることもあるけれど、そんな時はクローゼットの中の秋物をしまってある衣装ケースから、羽織ものなどを引っ張り出して対処していた。

とりあえずそれでなんとかなってしまっているのも、衣替えを面倒くさいと感じる理由の一つである。


「なっちゃんが触ってもいいって言うなら、俺がやるけど」

「いいわけないでしょ。て言うか、いいって言ってないのにいつだって勝手に触ってるじゃない!」

「そう言えば。じゃあ、別にいっか。今度時間がある時にやっておくね」

「違っ、やらなくていい!!」


しまった余計なことを言ってしまったと思ったが、きっともう遅い。


「ところで、なっちゃん。ここ、ハネてるけど、それってわざと?」


“ここ”と津田が指差したのは、自分の耳のやや後ろ。

漫画とかアニメのキャラクターみたいで可愛いよ、と笑う津田を睨みながら、夏歩は示された場所に手を伸ばす。

指で梳いてみたり、手の平で撫でつけるようにしてみたり。そんな夏歩を見ていた津田は、「んー……惜しい。もうちょっとこっち」と手を伸ばし、ハネた箇所を整えた。
< 91 / 365 >

この作品をシェア

pagetop