【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
一夜遊戯
夜空を貫くようにそびえる、六本木の巨大ビル。
友人とふたりでそこを訪れたのは、ある目的のためだった。
「本当に大丈夫? 美織。絶対後悔しない?」
「うん。しない。大丈夫だから行こう?」
私は隣にいる稲葉凛子にしっかり頷いてみせた。
今夜は特別な夜だ。覚悟なら何日も前から決まっている。
「迷いはないみたいね。じゃあさっそく乗り込もう! 美織は今までがお堅すぎたから、結婚前に少しは冒険したほうがいいんだよ」
凛子はそう言って軽くウインクすると、目の前の重厚なドアを開ける。一般には知られていない、秘密の出入り口だ。
中に入ると、がらんとしたホールの奥にエレベーターが一台だけあった。これに乗れば、最上階の五十五階へと一気にたどりつけるらしい。
私は緊張しながら凛子に続いて乗り込む。
お父さんお母さん、ごめんなさい。私は今夜、最初で最後の悪い子になります――。
動き出したエレベーターの中、私は両親に向かって心の中でそう懺悔していた。
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