【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「それは……。あの夜は特別です。いわゆる〝清水の舞台から飛び降りる〟的な感覚で……」
「知ってる。俺にもお前の決死の覚悟は伝わってたから、ちゃんと満足させてやれるかちょっとプレッシャーだったんだ。ま、美織の反応見る限り大丈夫だったみたいだけど」
そんな言葉と共にからかうように顔を覗き込まれ、羞恥に耐えられなくなった私は「知りません!」と言い放つ。
そして、とっくによそいおえていたシチューのお皿を押し付けるように彼に渡した。
「お夕食の準備が整いました!」
「ああ、ありがとう。腹減ってるの忘れてた」
沸騰したやかんのように熱くなっている私とは対照的に、尊さんはシチューのお皿を手に涼しい顔でダイニングに戻っていく。椅子に腰かけ、スプーンで早速シチューを飲み始める何気ない所作すら美しく、育ちの良さが垣間見えた。
こうして見ると、過去にピアスの穴が五個も開いていたなんて嘘みたい。尊さんが私を〝ギャップだらけ〟と言っていたけれど、彼だってなかなか意外性のある男性だ。
とんでもない遊び人かと思えば、私との結婚については真面目に考えてくれていて……四六時中強引で俺様なのかと思えば、ふとした時に私を優しく甘やかしてくれる。
……そんなあなたに私だって、興味が尽きないんですよ?