【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
膝の上で握っていた拳をさらに強く握りしめ、居たたまれなさに耐えていたその時。
運転席からゴン、という固い音がして、何事かと横を向くと、窓ガラスに頭をもたれさせ、なにやら難しい顔で目を閉じている尊さんの姿が。
「ど、どうしたんですか尊さん! ご気分が悪いですか?」
慌てて声をかけると、尊さんは薄っすら瞳を開けた。
「違う。……ちょっと自分自身で戸惑ってるだけだ。女性からの告白なんて飽きるほどされてきたはずなのに、なんで美織の言葉だけこんなに……俺の心を揺さぶるんだろうって」
休日仕様でナチュラルに下ろされていた前髪をかき上げながら、憂いを帯びたような眼差しでそう語った彼に、ドキンと鼓動が跳ねた。
これまでたくさんの恋愛経験を積んでいるであろう彼が、私の言葉ひとつで戸惑い、こんなに切なげな瞳をしているなんて……。
ぎゅ、と締め付けられたような痛みを覚える胸に手を当て、私は確かめるような口調で呟く。
「この気持ちを……人は恋と呼ぶのでしょうか。だとしたら、思っていたよりも苦しさを伴うものなんですね。もっと、ただただ甘い感情だと思っていました」
「……俺もだ」
意外な言葉に彼の方を向くと、ハンドルを握り直した尊さんが苦笑して話し出す。