【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「なるほどな……。美織は、この時点の過去に戻りたいとかあるのか? 高校生頃に戻って、思い切り親に反抗してやる、とか」
「いえ、特には……。尊さんは?」
「俺もない。というか、過去を変えてしまったら、こうして美織と出会う現在がなくなっているかもしれないだろ? ……そうなったら困る」
「そっか……そうですね。今がいいです、私も」
そう言って微笑み合うと、しみじみとした幸せが心に広がっていった。
映画を観る前からこんなに楽しくていいんだろうか。
そんなふわふわとした浮かれ気分でいるうちに、上映時刻が迫っていた。
「あ、もうすぐ時間です」
「……ああ。行こう」
尊さんの返事には一瞬間があり、立ち上がる直前、彼はなにかを振り払うように、小さく頭を振っていた。
尊さん、なんだか疲れているみたい……?
「あの、尊さん、無理していませんか? お疲れなら、映画はやめて家に帰った方が」
並んでシアター内に向かう途中、彼の体調が心配になって声をかけたけど、尊さんは軽く笑って私の手を握る。