【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~

「……大丈夫だよ。美織、この映画見たかったんだろ?」

「ですけど……映画はまた別の日にひとりでも見れますし」

「そんなつれないこと言うなよ。せっかくだから一緒に見よう。な?」

そう言われてしまうと頷くしかなく、尊さんに手を引かれながらシアターに入っていった。

席に着くと、スクリーンにはすでにこれから上映予定の作品の予告編が流れていて、つい見入ってしまう。次に尊さんと見に来れるのはいつになるだろう。その時はどんな作品をやっているのかな……。

色々と思いを馳せながらいくつかの予告編を見終わって、ふと尊さんの方を向いた時だった。

「あ……」

目に入ったのは、私の席との間にあるひじ掛けに頬杖を突き、安らかな顔で眠る彼の姿。

近くから顔を覗いて目の前で小さく手を振ってみても起きる様子はなく、短い間にすっかり熟睡してしまったらしい。口では大丈夫と言っていたけど、やっぱり疲れていたんだ。

結婚式の打ち合わせの後、まっすぐ家に帰ることもできたのに……きっと、私がデートを楽しみにしていると思ったのだろう。

無理をしてまで時間を作らせてしまったことが心苦しくなる。けれどその反面、無防備な寝顔を見ていると、彼の優しさが伝わってくるようで、胸があたたかくなった。

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