【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
……今日は、私のためにありがとう、尊さん。映画が終わるまで、どうかゆっくり寝てください。
胸の内で彼にそう告げると、私はスクリーンに向き直り、ひとりで映画を楽しむのだった。
エンドロールが流れ終わり、シアター内の照明がパッと明るくなったところで、尊さんは目を覚ました。
周囲の客たちが出口に向かっていく騒がしい環境の中、自分の今置かれた状況を計りかねているように、ゆっくり目を瞬かせて辺りを見回す。
「あれ? 俺……」
俯いて記憶をたどり始めたらしい彼に、私はふふっと笑って告げる。
「おはようございます、尊さん」
尊さんはそのひと言で状況を察知し、盛大な溜息をついて額に手を当てた。
「……悪い。寝てたのか」
「はい、すごく気持ちよさそうに。……でもいいんです。尊さんの可愛い寝顔を見られて幸せでしたから」
「可愛い? ……三十過ぎた男の寝顔がか?」
怪訝そうに眉根を寄せる彼に、私はもちろんと言わんばかりに頷いてみせる。