【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
ちょ、ちょっと待ってください……! 誰もいないからって、こんな場所で、こんな格好して、こんなキス……! 分別のある大人同士が、はしたなすぎる……!
「た、尊さん……もう……」
〝もうやめて〟と言いたいのだけれど、息も絶え絶えになっていて、うまく言葉が紡げない。
それをいいことに、尊さんは意地悪く口角を上げて、妖艶な低い声でこんなことを問いかけてくる。
「もう……なに? キスだけじゃ足りない?」
「ち、違いますっ! ふざけないでください!」
怒りと羞恥でカッと顔が熱くなり、鬼の形相で彼を睨んでから素早く膝の上から下りて歩きだす。
そしてぷりぷりしながらひとりでシアターの出口に向かっていると、背後で尊さんがクスクス笑っているのが聞こえてさらに腹立たしくなった。
もう、尊さんってば……! 寝ている時は可愛かったのに、起きたら途端に意地悪になって……!
しかし、いくら胸の内で不満を爆発させようと、鼓動は紛れもなくドキドキ高鳴っていて。
彼に優しくされようが意地悪されようがどちらにしろ加速してしまう恋心には、もうブレーキがかかりそうになかった。