【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「直美さんって……どなたなんですか?」
「ん? ……ああ、昔の女だ」
尊さんはそっけなく言うと、電話に出ることもなく切ってしまった。そうしてスマホをもとの位置に戻し、再び私にキスを落とそうとするけれど。
「ちょ、ちょっと待ってください……昔の女って?」
私は彼の胸をそっと押し返して尋ねる。未来の妻として、とうてい聞き流せる発言ではない。
「そのままの意味だよ。昔は関係があったが、今はない」
「じゃあ、どうして電話がかかってくるんです?」
「さぁな。向こうは俺のことをいまだに遊び相手だと思っているのかもしれない。婚約者がいると話したこともないし」
尊さんは何でもないことのように言うけれど、そんな曖昧な別れ方だったなら、また電話がかかってくるかもしれないじゃない。
「……で、では、相手の方にちゃんとその旨をお伝えしてください! 今のままではその方に失礼です!」
「別にいいだろう。あっちだって本気ではなかっただろうし、無視していればそのうち諦める」
「私が嫌なんです……!」
真剣に考えようとしない彼に苛立ち、私は思わず感情的に声を荒げてしまう。