【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
試すような視線に射抜かれる。
彼は逆のことを口にしながら、禁断の果実がもっと欲しいだろう?と私を誘惑しているのだ。
でも……もしも毒に侵されたとして、私は本当に困るの?
これから待ち受ける望まない結婚のことを思えば、むしろ毒に蝕まれて、思考を奪われてしまいたいんじゃないの?
今夜はそのために、あの窮屈な家を飛び出してきたんでしょう……?
「もっと……食べたい、です」
頬は真っ赤になっているに違いない。それでも、私は尊さんに正直な気持ちを伝えた。
「食べさせて、ください」
畳みかけるように言ったあと、勇気を出して自分から、彼の唇に一瞬だけキスをした。
情けないことに私は震えていた。おそらく尊さんの女性遍歴至上、最もキスの下手な女だろう。
それでも今夜はあなたと共にいたい。どうか私に、甘い夢を見せてください――。
そんな切実な思いを抱えて彼を見つめると、黙っていた尊さんが不意に顔を寄せてきて、息のかかる距離でぼそりと呟いた。
「……イケナイ子だな、美織は」