【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「いえ、いいんですよ。では、僕はこれで。……どうかお幸せに」
勝又さんはにこりと笑ってお辞儀をすると、待たせていたタクシーに戻ってマンションの前から去った。その姿が見えなくなると同時に、私はようやく恐怖心から解放され、深く息をつく。
尊さんはそんな私を無言でジッと見下ろした後、強引に私の手首をつかんでマンションの中へと引っ張っていった。
「尊さん……?」
少し痛いくらいの力で掴まれ、彼が怒っているのではと不安になる。怒られても仕方のないことをしたのは自分だから、ショックを受ける権利などないのだけど……。
後悔と自責の念が渦巻く中、エレベーターに乗せられる。やがて扉が閉まり二人だけの密室になると、尊さんは私を壁に追い詰め、顔の脇にダン!と勢いよく手をついた。
反射的にびくっと体を震わせた私に、苦し気な瞳をした尊さんが問いかける。
「お前、なにをずっと怖がっている……? 本当は、さっきの男になにかされたのか?」
壁についていない方の彼の手が私の顎を掴んで、瞳を覗かれた。
その鋭い眼差しにすべてを見透かされてしまいそうで、私はかすかに視線をずらして答える。