【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「いえ……なにも……」
「じゃあ……俺が怖いのか?」
予想もしなかった言葉に、私は怪訝な顔をして聞き返す。
「え……?」
「さっきからずっと震えていただろう。お前の朝帰りに腹を立てた俺に、なにをされるかわからないと思っていたんじゃないのか?」
なんで……尊さんはそんなことを……?
「私、決してそんなこと思っていません。あなたを怖いだなんて……!」
「……そうか。なら……抱きしめてもいいか?」
どうして許可を求めるの? いつものあなたなら、私が照れようが拒否しようが、そのあたたかくて強い腕の中に無理やり閉じ込めるのに。
どことなく弱気な尊さんに胸がギュッと締め付けられ、私は自ら彼の背中に腕を回した。
「いいに決まっています。私も……こうしたかったです」
「美織……」
愛し気に呟いた彼が、私を強く抱きしめ返す。ずっとそのままでいたかったけれど、エレベーターはやがて私たちの自宅がある階に到着し、話の続きは部屋に戻ってからになった。
部屋に入ると、尊さんがコーヒーを淹れてくれ、私たちはリビングのソファに並んで座った。
しばらくお互いに無言だったけれど、やがて目の前のテーブルで湯気を立てるカップを見つめながら、尊さんが自嘲気味に切り出す。