【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「さっき、俺のことが怖くないかと聞いただろう。あれは、……自分で自分が怖くなったからなんだ」
「自分が怖い……?」
「ああ。美織がいつになっても帰ってこないと心配していた時は、まだまともだったんだが……朝、男と一緒にいると電話をもらってから、驚くほど動揺した。美織が俺を裏切るような女じゃないのはわかってるのに、嫉妬心でどうにかなりそうで。嫉妬するということは美織を信じ切れていないんじゃないかと思うと、そんな自分に腹が立って……とにかく色んな感情でぐちゃぐちゃだった。美織が帰ってきた時に冷静でいられる自信もなかった」
「尊さん……」
そこまで彼を悩ませてしまったのだと知り、罪悪感が膨れ上がる。どうすれば、彼の心を救えるのだろう。楽にしてあげられるのだろう。
「だから、あの男と対峙したときもそうだし、今だって……こうして冷静なふりをしているが、本当はお前に襲い掛かって、この感情をすべてぶつけてしまいそうなのを必死で堪えているんだ。美織の前では余裕のある大人の男でいたい。お前に幻滅されたくないって思って……」
前を向いて話していた彼が、視線をこちらに投げる。そして互いの視線が絡むと、切羽詰まった表情で「でも」と続けた彼が、私の膝の上にある手をぎゅっと握った。