【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
ジム……トレーニング……。それらの単語は、俺の不安を煽るのに十分すぎた。
俺が出張に出かけていた時、美織はジム友ができたと嬉しそうに報告してきた。そのくせ、最近はジム通いにあまり乗り気ではなく、ジムの話自体をあまり好まない様子で。
ジムで親しくなった勝又と一線を越えてしまい、後ろめたさがあったということなのか……?
馬鹿な。美織はそんな女じゃない。いったいなにが真実なんだ……。
疑ってはそんな自分を嗜め、心の中はぐちゃぐちゃだった。
思わずくしゃりと髪に手を差し入れ険しい顔をする俺に、勝又は満足げな笑みを浮かべてスマホをポケットにしまった。
そして「じゃ、俺はこれで」と足早に俺の元を離れようとしたので、俺は思わず彼を呼び止めてこう尋ねる。
「待て。目的はなんなんだ……?」
ただ写真を見せただけで、金を要求するわけでもない。そんな勝又の行動が不可解だったのだ。
「富、名声、良家のお嬢様である彼女との結婚……何もかもを手にしているあんたに、ダメージを与えたかったからかな。気に食わないんですよ。生まれながらにして恵まれた環境にいて、なんの苦労もせず生きてきたあなたのような男が」