【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
冷ややかな視線で俺を見据え、抑揚のない声でそう言い残した勝又は、スタスタと俺の前から去っていった。
聞きたいことはまだ山ほどあったが、勝又の気配が目の前からなくなった今、今度はまぶたの裏に焼き付いた、淫らな美織の姿が俺を苦しめ始める。
「美織……どうして本当のことを話してくれない?」
完全に平常心を保てなくなっていた俺は、パーティー会場に戻ることもできず、かといって家に帰る気にもなれなかった。
しばらく呆然とその場で不毛な時間を過ごした後、遊び慣れた六本木――サンクチュアリに向かって車を走らせるのだった。
*
ビルの駐車場に車をひと晩預けることにしてサンクチュアリのバーに入った俺は、カウンター席でキープしてある上等なワインを開けると、味や香りを楽しむこともせずに次々グラスに開けては飲み、酔いが訪れるのを待った。
しかし今夜はどうにもうまく酔えず、むしろ憂鬱に拍車がかかるだけ。頭の中は常に美織のことでいっぱいだった。
『……いいえ。尊さんといたいです』
昼間駅まで美織を送った時、実家に泊まったらどうかと提案した俺に彼女はそう言ってくれた。
あのまっすぐな瞳に、凛とした声に、嘘はなかった。美織はきっと、今も俺の帰りを待っている。