【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
早く帰らなくては、と頭では何度も思うのだが、なかなか立ち上がる気になれなかった。
そのままなかなか家に帰る決心がつかず、とうとうボトルを一本空にした頃だった。隣の席にひとりの女がやってきて、無遠慮に俺の顔を覗いた。
「後ろ姿が似ていると思ったら、やっぱり尊じゃない。久しぶりね」
顔を上げると、過去に数回関係を持ったことのある元遊び相手、新條直美がいた。
気の強そうな吊り目勝ちの瞳で、パンツスーツを着こなし、いかにもバリキャリといった風体は昔と変わっていない。俺は彼女に虚ろな目を向け、そっけなく挨拶をした。
「お前か……。久しぶり」
「なによしけた顔しちゃって。あ、そういえばこないだ電話したのに無視したでしょ。聞きたいことがあったのに」
「……じゃあ今聞けよ。なんだ?」
本当は、もしもこんなふうに直美と再会することがあったなら、美織という婚約者がいることを説明すると決めていたのだが……今夜はそんな気分になれず、彼女の用件だけを短く問う。