【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~

「ある男のことを聞きたいの。最近この店に出没してるって聞いたから……」

直美はそこで言葉を切るとバーテンダーを呼んで、美織が飲んだら卒倒しそうな強いカクテル、ブラー・ミストを注文した。

そしてバーテンダーが背後の棚に気を取られている隙に、こちらにずいっと身を寄せて耳打ちする。

「勝又烈って男を知らない? まぁまぁ綺麗な顔に眼鏡をかけてて、ひょろっとした体型」

あまりにタイムリーな人物の話題に、俺は思わず飲んでいたワインでむせた。

「知っている。さっき別の場所でだが、彼と話したところだ。しかしあの男、何者なんだ? お前が追っているということは、まさか……」

直美は、警視庁のトップである警視総監の娘。その立場もあってサンクチュアリの会員になれたわけだが、彼女自身も、警視庁組織犯罪対策課に身を置く刑事である。

そんな彼女が勝又を追っている理由などひとつしかない。抱いた予感を確かめるように直美を見つめると、彼女は厳しい顔で頷く。

そして、注文した酒がコトリと目の前に置かれると、ロックグラスに満たされた琥珀色の液体をぐっと飲み干した直美が、声を潜めながら続けた。

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