【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「ひと昔前、この辺一帯に影響力のあった勝又組ってやくざの若頭よ。……組長だった男が刑務所に入ってからは大人しくしていたんだけど、その男がつい最近出所したの。その少し前辺りから、若頭の勝又烈が不穏な動きをしているって情報が入って」
「勝又組……」
あの男、ただ者ではないと思ったがまさか極道の者だったとは……。
勝又組という名前くらいは俺も知っていたが、組織が目立って活動していたのは過去の話だったので、まさかこんな身近に関係者が潜んでいるとは思いもよらなかった。
しかし、あの男の不気味な迫力にはこれで納得がいった。
そして、美織があの写真のことを俺に話さなかったのも、なにか理由があるのだとようやく確信する。勝又はおそらく、俺に話したらどうなるか……などと狡猾な脅しで、彼女を精神的に追い詰めたに違いない。
あの夜美織がなにかにおびえたような様子だったのも、きっとそのせいだ。どうしてもっと早くに気づいてやれなかったのだろう。
「……勝又はどういうわけか俺を憎んでいるらしいんだ。それで、俺の婚約者にちょっかいを出してはこちらの反応を見て楽しんでいる。彼女か俺に、必ずまた近づいてくる。その時はすぐお前に連絡するよ」
俺がそう約束すると、直美の顔からなぜか緊張感が薄れ、彼女は興奮したように頬を赤くしながら俺に詰め寄ってきた。