【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「なによ尊、あなた婚約したの? しかもそんなシリアスな顔して〝俺の婚約者〟だなんて……とうとうあなたにも本気になれる相手が見つかったんだ! やだもう、なんかこっちが照れる!」
勝手に盛り上がる直美に辟易して、俺は席を立った。彼女の反応を見る限り、やはり俺と同様、関係を持っていた当時から本気ではなかったのだ。
しかし、俺は遊び人はもう卒業した。
たったひとりの大切な女性だけを愛し、この手で守りたい。ガラじゃないとわかっていても、それが今の正直な気持ちなのだ。
「……じゃ、俺は可愛い婚約者に会いたいから帰る。勝又のことでなにかあったら連絡する」
「了解。くれぐれも危険な行動は取らないようにね。そういうのはプロであるこっちに任せて?」
「ああ、わかってるよ」
直美に軽く返事をして、サンクチュアリを出る。
早く家に帰って、とにかく美織と話がしたい。彼女の抱える苦しみを、吐き出させてやりたい。
そんな思いを抱きながらタクシーに揺られ、自宅マンションに帰り着いたころには日付が変わっていた。
それでも、美織なら俺を起きて待ってくれている。無性にそんな気がして、はやる気持ちで玄関のドアを開けたのだが。
「美織……?」
明かりのついていない廊下は静まり返っていて、家のどこにも彼女の気配はなかった。
――どくん。俺の鼓動が、重く歪な音を奏でて揺れた。