【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
英雄遊戯
「式の準備が順調そうでよかったわ。鞍馬さんもお忙しいでしょうに、毎回打ち合わせに付き合ってくださるなんて優しいのね。ほとんど私に任せきりだったお父さんとは大違い」
「おい、そこでなぜ私を引き合いに出す。……ま、しかし鞍馬くんが優しい男だというのは同意見だ。その調子なら、同居生活もうまくいっているんだろう?」
久々の実家で両親、祖母と共に夕食を楽しんでいると、父にそう聞かれた。私は少しだけ返事に迷い、けれど家族を心配させまいと笑顔を貼り付けて頷く。
「……うん」
表面上は、確かにうまくいっている。両親の言葉通り尊さんは優しいし、愛されている実感もある。
しかし、彼に重大な隠し事をしている今の私が、そのまっすぐな愛を受け取る権利があるのかと、疑問に思う気持ちが常に拭えない。
尊さんが好きな私は、他人にも自分にも嘘をつかない誠実な私なのに……。
ずっとそんなことばかり考えていたせいで、私は食事の最中どこか上の空で、懐かしいはずの母の手料理も味気なく感じられた。
浮かない気分のまま食事を終え、そろそろマンションに帰らなければと荷物をまとめていると、「美織、ちょっとおいで」と祖母が私を呼んだ。