【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
和室で向き合った祖母はいつものようにのんびりお茶をを入れてくれて、私がそれを一口啜ったところで口を開いた。
「帰ってきてからずうっと悲しい顔してるけど、どうしたの? 鞍馬さんとなにかあったんじゃないのかい?」
私はドキッとして、肩を震わせた。お祖母ちゃん、食事中はなにも言ってこなかったけれど、私の元気がないのに気づいていたんだ……。
昔から、父や母には言えないことも祖母にだけは漏らしてきたので、その優しさに甘えてつい弱音を吐きたくなってしまう。
でも、今回の件はいくらお祖母ちゃんが相手でも話すわけには……。
「大丈夫、なんでもないの。ただ疲れているのかも」
そんなふうに誤魔化して笑いかけたけど、祖母は咎めるような瞳で私を見ながら言う。
「美織。お祖母ちゃんを見くびるんじゃないよ。あんたが泣きたいのを我慢しているのはわかってるんだ。……なにがあったか言ってごらん?」
「お祖母ちゃん……」
どうしよう。ひとりで抱えているのも耐えきれなくなりそうなこのタイミングで、そんな優しくされてしまったら……もう観念して、なにもかも話してしまいたくなる。
祖母はいつでも私のことを否定したりせず、黙って話を聞いてくれる。子どもの頃からずっとそうしてくれた彼女に、甘えてしまいたい――。