【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「美織」
優しい声音に再度促され、私はとうとうすべてを明かす決心をする。
「うん。わかった、聞いてくれる……?」
私は震える声で、自分の置かれた状況をゆっくり説明し始めた。
勝又烈という危ない世界の男性と知り合いになり、その男性の策略で、恥ずかしい写真を撮られてしまったこと。その写真をネタに、彼と職場の上司とが目論む不正な融資を見過ごせと脅されていること。
そして、その一連の出来事を尊さんには言えずにいて、どうしようもなく苦しいのだということ……。
ときどき声を詰まらせながらもすべてを白状した私に、祖母は黙って瞳を潤ませた。
それから上を向いて小さく鼻を啜ると、しわくちゃの口を開いて優しく私に声をかける。
「ひどい話だね。でも、美織はなにも悪くないじゃないか。悪いのは全部その勝又って男だ」
「でも……私も一緒になって、尊さんに嘘をついた」
「嘘はいけないけど……美織も追い詰められていたんだ。鞍馬さんには、今からでもきちんと本当のことを話せばいい」
祖母の言っているのが正論だというのはよくわかる。しかし、本当のことを話したらどうなってしまうのかと思うと、一歩が踏み出せない。