【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
私は家を出たところでスマホを取り出し、インターネットの検索窓に『勝又組 事務所』と打ち込んだ。すると拍子抜けするほどあっさり住所が判明した。
「渋谷か……そんなに遠くないみたい」
繁華街の中にあるそのビルの付近は、今までに何度も通りかかったことがあるのに、そんな危険な人たちが身近に潜んでいたってことには全く気がつかなかった。
彼らの組織が不正融資によって大金を得たら、ますます東京の治安は脅かされてしまう。
……そんなの、許してたまるものですか。
気を引き締め直し、駅に出る方の通りに向かって、交差点をまっすぐ進もうとしたその時。
私の行く手を阻むように、一台の車が無理やり横断歩道に侵入してきた。おそらくアメリカ車と思われるシルバーのボディは、時代を逆行するように大きく角張っている。
なによ、この車……。私が迷惑そうに顔をしかめると、後部座席のスモークガラスがゆっくりと下に開き、そこから今まさに会いに行こうとしていた人物が顔を出した。
「勝又さん……」
「乗って、沖田さん。きみと話がしたい」
感情の読めない表情で淡々とそう言った勝又さん。
この車に乗ってしまったら、おそらくもう逃げ出せない。そうわかっていたけれど、私は腹をくくってうなずいた。